24.04.11

日々に忙殺されかけたあの頃とは違って、今はこの新しい環境も、次々にやってくる仕事も課題もそつなくこなせている様に感じる。

研究室に通い始め3週間が経とうとしている今日、初めて怪我をした。

 

病理診断を行うためには持ち運ばれてきた検体を薬品で適切に処理して、薄く薄く切り、スライドガラスの上で染色して、それを顕微鏡で見る。この薄く薄く切る機械なのだが、驚くほどアナログで、検体を挟みその上部で刃をスライドさせるのである。

この刃がものすごくよく切れる。まあ専門的な機械なのでそうでなくては。

作業中はもちろん集中していたのだが、作業後、掃除をしようとした時に、左薬指の第一関節が刃に当たった。手には実験用手袋をしていた。

手袋の薬指部分はパクッと綺麗に開いていた。そこから真っ赤な指が見えた。どんどん溢れてラテックスの手袋の薬指が液体でいっぱいになって、手の甲まで濡れているのがわかった。血液独特のぬるさがなんとも気持ち悪かった。

幸運なことに綺麗に切れたため全く痛くはなかった。それより何より作業台が汚れている方が気になった。

手袋を外すとポタタタタっと床に垂れた。とりあえずラテックス手袋で薬指を縛って簡易的に止血をし、急いで床や机を掃除した。

 

絆創膏はあるけど消毒液がない。困った。

今日切った検体の内容を思い出す。老衰で亡くなった猫の肺、犬の皮膚腫瘤、皮下水腫を起こして死んだ馬の肺。

刹那、クロストリジウムの存在が頭をよぎったが、検体は処理されている。

また冷静に実験室にあるH2O2を適当に希釈してオキシドールを作り消毒をした。

絆創膏を貼った後もなかなか血はおさまらず、3回貼り替えた後、もう諦めた。